大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪簡易裁判所 昭和43年(ろ)1703号 判決 1969年2月03日

主文

被告人は無罪。

理由

本件公訴事実は、

被告人は、法定の除外事由がないのに昭和四三年六月一八日午後七時四八分ころから翌一九日午前三時五四分ころまでの間大阪市天王寺区石ケ辻町三七番地先道路上に普通乗用自動車を駐めおき、もつて夜間に道路上の同一場所に引き続き八時間以上駐車することとなるような行為をしたものである。

というのである。

自動車の保管場所の確保等に関する法律八条二項二号、五条二項二号(本件規定)は罰金刑を定めたものであるから、「特別の規定」のない限り刑法総則の適用がある。(刑法八条)ところで自動車の保管場所の確保等に関する法律には特別の明文の規定はなく、同法八条三項は同条二項三号および四号について過失犯の処罰を明規しているのに反し、本件規定については過失犯の処罰について明文の規定を設けていないのであるから、本件規定には「特別の規定」はないものというべきである。したがつて本件規定は故意犯の構成要件を定めたものと解釈される。(刑法三八条一項)

そこで証拠を検討するに、<証拠>を総合すると、被告人は昭和四三年六月一八日午前八時ころ、自己の勤務先である日本警備保障株式会社が駐車場としている大阪市天王寺区石ケ辻町三七番地先の空地内から自己所属の自動車を道路に出すため、同会社社長の常用している自動車(本件自動車)を同空地前道路上(本件場所)に放置したまま同会社に出勤したこと、その際被告人は、誰かが気付いて本件自動車を同空地内に入れてくれるものと思い、もし入れてくれていなかつたら後で自分で入れるつもりであつたこと、被告人は、同日午後九時ころ勤務を終えて同空地内に自己所属の自動車を入れたが勤務の疲れなどのため、本件場所に放置されたままになつていた本件自動車に気付かず、同会社宿直室で就寝し、翌朝午前一一時ころになつてはじめて本件自動車が本件場所に引き続き放置されていたことを知つたことがそれぞれ認められ、他に被告人において本件自動車が夜間に同一場所に引き続き八時間以上駐車することとなることを認識しかつ認容していたものと認めるに足りる証拠はなく、本件公訴事実は犯罪の証明がないことになるから、刑事訴訟法三三六条により主文のとおり判決する。(塩田武夫)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例